『恋愛小説家』
学生時代には映画雑誌を読み漁り、無類の映画好きを自負する私。
落ち込んでゲラゲラ笑いたくなった時、とにかく泣いて心を浄化(?)したい時などの十八番映画の中、特に心に残り、自身の言動の軸の一つになっている言葉に出合った映画を紹介させてもらいます。
タイトルは「恋愛小説家」、ロマンス映画ともヒューマン映画とも評される作品です。
日本での公開が1998年なのでだいぶ古いですね。
主人公はジャック・ニコルソン演じる、偏屈で極度の潔癖症、自尊心が高く神経質な恋愛小説家。
発せられる言葉は悪意に満ち、嫌味たらたらで周囲の人から嫌われている変人。
行きつけのレストランでは決まったテーブルにしか座らずに、カトラリーセットは持参。
目玉焼きの調理方法にまで口を出す始末。
ただ、社交的で優しい馴染みのウェイトレスには少しだけ心を許している様子で、
彼女以外からのサービスは受けない徹底ぶりです。
そんな彼がひょんなことから、恋愛小説家と同じアパートに住むゲイの画家、心を許すウエイトレス、小説家の彼と3人で1泊2日の車旅に出ることになります。
道中の出来事や3人のやり取りを経て、彼の中に変化が起こります。
そして彼が彼女に言った一言が、
「あなたに出合って良い人間になりたいと思った」。
この映画に私が何歳の時に出合い、その時の私がどのような状況であったかは忘れてしまったのですが、とにかく心に残ったのです。
自分と出会った、対峙した、同じ時間を過ごした他人が、この人の前では良い人間になりたい、なろうとするなんて、、、
どれだけ良い人である必要があるかのか。
自分が良い人になろうとするのが第一段階だとすると、これはもっともっと上の段階のような気がするのです。
何かを頼まれたら気持ちよく、何かに取り組むときには一生懸命、そんな風にどんな場面でも気持ちの良い人でありたいと思わせてくれた1本です。
秋の夜長にぜひ観てみてください。
(ペンネーム/麦子)